『えのき』の『の』、脳血管障害

こんにちは。

今日の青森市は久しぶりに晴れましたね。

 

これから夏本番になると熱中症が増えてきますが、他にも気をつけなければいけない病気があります。

 

それは『脳梗塞』です。

 

『えのき』のおさらい

 

糖尿病の細い血管の合併症は糖尿病3大合併症と言います。3つの頭文字をとって『しめじ』と覚えます。

 

一方、太い血管の合併症は『えのき』です。

 

えのきは

 :壊疽(えそ)

 :脳血管障害(脳梗塞)

 :狭心症・心筋梗塞(冠動脈疾患)

 

です。

動脈硬化によって血管が狭くなったり詰まってしまうとその先に酸素や栄養が届かなくなって細胞が死んでしまいます。

足の血管が詰まれば壊疽、脳の血管が詰まれば脳梗塞、心臓の血管が詰まれば狭心症・心筋梗塞となります。どれも命に関わる病気です。

 

糖尿病だけでなく、高血圧症や脂質異常症、喫煙や肥満、ストレスでも動脈硬化は進行します。

 

脳血管障害

 

脳血管障害(脳卒中とも言います)は日本人の死因の第4位、介護が必要となる原因疾患の第1位です。

 

血管が詰まるタイプ「脳梗塞」と、血管が破れるタイプ「脳出血」「クモ膜下出血」に分けられます。昭和30年代は脳出血が7割以上を占めていましたが、現在では脳梗塞75.9%, 脳出血 18.5%, くも膜下出血 5.6%と脳梗塞の割合が増えています。

 

冬に多い脳血管障害は脳出血とクモ膜下出血です。冬は血管が縮んで血圧が上がるので、血管が破れやすくなります。一方、脳梗塞の発症は夏に多いです。理由としては、夏は体が脱水状態になりやすいことがあげられます。脱水が起きると血液がドロドロになり血管が詰まりやすくなります。

 

また、糖尿病があると脳梗塞の起こす可能性が2~3倍高まると言われています。糖尿病が脳出血やクモ膜下出血を起こす可能性を上げるというエビデンス(科学的根拠)はないです。ただ、糖尿病があるとこれらの病気を発症した後の経過が悪くなることはわかっています。

 

今日は夏に多く、また糖尿病に最も関連のある『脳梗塞』についてのお話しです。

 

脳梗塞の3つのタイプ(3大臨床病型)

 

(1) 脳の細い血管が詰まる「ラクナ梗塞

(2) 脳の太い血管が詰まる

     「アテローム血栓性脳梗塞

(3) 心臓にできた血栓(血液のカタマリ)が流れて脳で詰まる「心原性脳塞栓症

 

があります。

3種類とも糖尿病と深く関わっています。ラクナ梗塞は、細い血管が多発性に詰まる日本人に多いタイプです。高血圧や糖尿病など動脈硬化の因子と最も関連の深いのはアテローム血栓性脳梗塞です。ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞は現在増加傾向です。心原性脳塞栓症は心房細動という不整脈が原因となります。心房細動とは心臓が不規則なリズムで動く病気で、血栓ができやすくなります。心臓でできた血栓が血流に乗って脳まで流されることで発症します。糖尿病で心房細動のある方は血液をサラサラにする抗凝固薬を服用することが多いです。

 

脳の機能は複雑なので、障害部位によって出現する症状は多彩です。脳のどの部分が障害を受けたかにより、症状は異なります。手足の動きを担当する領域が障害を受けた場合は手足のしびれ、麻痺、歩行困難になります。言語領域の場合には“ろれつ”が回らないの言語障害などが起きます。

 

数分間の前兆

一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれる脳梗塞の前兆があります。

 

小さな血栓が一時的に血管を詰まらせて症状が起こります。

 

体の片側の手足に力が入らない、半身のしびれ、ろれつが回らない、言葉が出てこない、物が二重に見える、重いめまい、激しい頭痛、ふらつく、歩行困難などの症状が現れますが、数分から数十分程度で治まってしまいます。

 

そのため、放置する人が多いですが、その数日後に本物の脳梗塞を発症させています。この前兆の段階ですぐに脳神経外科・神経内科・救急センターで検査してもらうことが重要です。

 

下記の様な症状が一つでも『突然』生じたなら

 

直ちに救急病院、または脳神経外科や神経内科のある病院にかかってください。

 

  • 突然出現した顔、手足のしびれ、または脱力感。特に右側の手足、あるいは左側の手足といった片側だけに起こった場合。
  • 突然出現した言葉の障害あるいは混乱状態。舌がもつれた感じ、言いたいことが言えない、相手の言葉が理解できないなど。
  • 突然出現した片目、あるいは両目が見えない、見えにくくなる症状。
  • 突然出現しためまい、歩行障害。
  • 突然出現した原因不明の激しい頭痛。

 

日本脳卒中協会では、

 

  1. 口がヘン!
  2. 言葉がヘン!
  3. 手がヘン!

 

と3つの「ヘン」な症状が「突然に」現れたら、脳梗塞のサインなので すぐに救急車を呼んで(119番をして)病院へ行くことを推奨しています。

 

http://www.jsa-web.org/

 

脳梗塞の予防

は3つあります。

 

予防①

脳梗塞は6月から8月の夏場、睡眠中と朝の起床後2時間以内に起こることが多いです。

就寝前と起床後にコップ一杯ずつの水を飲むことが脳梗塞予防につながるといわれています。

夏の多汗、高齢者は脱水になりやすく、これは血液の流れを悪くする要因になります。適度な水分摂取は脱水を防ぎ、脳梗塞だけでなく熱中症の予防にもなります。

 

予防②

また、脳梗塞の発症は加齢や生活習慣と深くかかわっています。

高血圧、血糖値、コレステロール値をすべていい状態に保っておくことが重要ですので、定期的な採血検査と家庭での血圧測定を行う必要があります。

また、喫煙肥満飲酒などの生活習慣にもアプローチしていくことも大事です。

 

予防③

脳梗塞は再発しやすい病気です。もし以前に脳梗塞を患ったことがあったら、その後2回目の脳梗塞を起こさないことが重要です(2次予防と言います)。厳格な血糖・血圧。脂質コントロールや禁煙が超重要です。

 

脳梗塞は命に関わる病気です。運よく命が助かっても半身麻痺など重篤な後遺症をきたすことも少なくありません。未然に防ぐことが重要です。

当院では一人一人の動脈硬化の状態を随時評価しています。ご不明点などあれば遠慮なく聞いていただければと思います。

 

(夏至、日の出前の太平洋   in 三沢)

 

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